日本の複数得点はベトナム戦だけで、昨年のW杯も準決勝まですべて1点差勝ち。その意識が強かったのか、中国戦ではロングボールを多用して敗れた/3月4日 (c)朝日新聞社
日本の複数得点はベトナム戦だけで、昨年のW杯も準決勝まですべて1点差勝ち。その意識が強かったのか、中国戦ではロングボールを多用して敗れた/3月4日 (c)朝日新聞社
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 ワールドカップ(W杯)カナダ大会準優勝の熱狂からわずか8カ月。リオにたどり着くことなく、「なでしこ」が散ったのはなぜか。

 出場6チーム中5チームが世界ランク20位以内なのに、五輪への切符はたった2枚。サッカー女子のリオデジャネイロ五輪アジア地区最終予選は、「世界で最も過酷な戦い」だった。

 2月29日の初戦。なでしこは、長身の選手が多いオーストラリアがロングボールを放り込んで攻めてくる──と踏んでいた。だが、笛が鳴ると、細かくパスをつなぎ、前線からしつようにボールを追い回してくる。想定との違いに、なでしこの選手たちは面食らった。結果は、1-3の敗戦。佐々木則夫監督(57)が、最も重視していた初戦を落としてしまった。

 同じような構図、実は昨年7月のW杯カナダ大会でもあった。決勝の米国戦。やはり予想に反して、セットプレーで低いボールを蹴ってくる「地上戦」を仕掛けられ、2-5で大敗。これを教訓にして、想定外の事態に対応できる柔軟さを学んでいなかったことになる。

 悪い流れは、なかなか断ち切れない。2日後の韓国戦は、先取点を守りきれずに1-1のドロー。五輪出場権の獲得は、残り3試合に全勝したうえで、他チームの結果次第という土俵際に追い込まれた。

 苦境になればなるほど、一体感を出せる。それが、なでしこの強みだった──はずである。

 しかし、3月4日の中国戦では1-2で再び黒星。4試合目の開始を告げる笛を聞く前に、予選敗退が決まった。

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