「妻に『何回でも闘ったらいいでしょ』と言われた時はホッとしました。妻は、すごく心配性やし、一人でレストランにも入れない。けれど『ワタシ論』みたいなのがあって、一緒に落ち込んだり悩んだりするだけの嫁ではなかった」

 家族とはタイプした文字を音声にする携帯アプリやLINE、ホワイトボードで会話する。

「風邪をひいた長女が、お父さん抱っこして~って甘えてくる。ギューッとしてあげている時、やっぱりまだまだ死なれへんと。それまでも子どもはかわいかったけれど、これまでとは違う感情がたくさんある。感情のパターンが増えました」

 15年4月、母校の近畿大学の入学式で声帯摘出を公表すると、ナインティナインの矢部浩之さん(44)からメールが届いた。

「びっくりしたしなんて声かけてええかわからんけど、これでプロデューサーに集中できるな」

 つんく♂さんは、「自分ではそう思っていても(仕事は)相手のあることなので、なかなか簡単ではない。客観的に他から言われたことで、ちょっと肩の荷が下りる感じがした。ありがたかった」

AERA  2016年1月11日号より抜粋

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