一見、畑違いに見え、1千万円だった年収も670万円に減ったが、失敗例ではない。実は、前職で顧客クレーム対応をしていた。その実績を買われ、責任者に抜擢(ばってき)され、不満をこぼさず丁寧に若手を指導。給料は転職後、順調に増えている。
勝因は、男性が自分の「市場価値」を理解していたことだ。
「過去の成功体験ではなく、自分の経歴から“今、何ができるか”という自身の価値をきちんと把握する。それができていれば、50代の転職は怖くない」(海野さん)
とはいえ、しみついた仕事のやり方や社風はなかなか拭えない。日本マンパワーの調査では、定年までのビジョンさえ、50代の約6割が持っていないのが現実だ。
人事・組織戦略コンサルタントの麻野進さんは言う。
「自分が人生シナリオの主人公になれば、50 歳以降の働き方は輝いてくる。50代は知識・経験・人脈が最も充実している年代。そのリソースを駆使すれば、独立や起業も夢じゃない。たそがれている場合じゃありません」
※AERA 2015年12月7日号より抜粋