岸田首相
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 内閣支持率はようやく底を打った感がある岸田文雄政権だが、衆参予算委員会での少子化対策や防衛費増などを巡る首相の答弁は明確さを欠き、質疑は極めて低調だ。現状を憂う専門家に、政権が抱える課題について直言してもらった。今回はジャーナリストの河合雅司さん。

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 岸田文雄首相が年頭の記者会見で、突如として「異次元の少子化対策」を打ち出したことには驚きましたが、財源のあてはなく、“意気込み先行”の印象を受けます。

 残念ながら、いまから異次元の政策を講じても日本人の出生数の減少に歯止めをかけることは困難です。これまでの少子化で、子どもを産める年齢の女性数が激減していく「少母化」が進んでいるからです。20歳の日本人女性は今後20年間で3割減ります。こんなペースで減ったのでは、出生率が多少改善しても出生数は減り続けるでしょう。

 現在の日本においては、出生数の減少スピードを多少遅くすることぐらいしかできません。岸田首相が「異次元の少子化対策」を人口減少の解決策として位置付けているならば間違いです。日本はもはや出生数が減り、総人口も減ることを前提として社会を考えざるを得ない状況に追い込まれています。

 少子化対策の財源の捻出には制約もあります。若い世代の経済負担の大きさが子どもを持たない大きな理由となっているからです。若い世代も負担する消費税増税に頼れば、児童手当を増額できても効果は薄れます。政府は高齢者の負担増による捻出も検討してますが、これも度を越せば若者の将来不安となります。

 少子化の最大の弊害は、若者が減って社会の勢いが削(そ)がれていくことです。子どもの数が減れば人材の裾野は細っていきます。それは若い人材が切磋琢磨しながら成長していく機会が減り、イノベーションを起こす力がだんだん弱っていくということです。

 政治家や官僚はもとより、われわれも「この先かなり長期にわたって人口減少は避けられない」という不都合な現実に正面から向き合う必要があります。本来、首相には人口が減っても日本経済を成長させ続け、社会が混乱しないようにするにはどうしたらよいかを考えてもらいたいところです。

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