オーストリア、ドイツ方面への列車が出るブダペストの東駅には今も連日、ハンガリーに入った数千人の難民が詰めかけている/9月10日(撮影/朝日新聞社・喜田尚) (c)朝日新聞社 @@写禁
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オーストリア、ドイツ方面への列車が出るブダペストの東駅には今も連日、ハンガリーに入った数千人の難民が詰めかけている/9月10日(撮影/朝日新聞社・喜田尚) (c)朝日新聞社 @@写禁
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 紛争が続く中東やアジアから欧州に流れ込む大量の難民たち。彼らがめざす「夢の国」は、その理想を掲げ続けられるだろうか。

 中東、アジアの紛争地から欧州を目指す人々の波は、もはや抑えることができない。波を決定的にしたのは、2011年に始まったシリア内戦だ。長期化する戦闘に、当初平和を待ち望んだ人が相次ぎ国を捨てている。先に周辺国に逃れた人も避難が長引くにつれ、生活が成り立たなくなった。

 国際移住機関によると今年、密航船などで欧州に着いた人は今月7日までで37万6千人。20万4千人だった昨年をすでに上回る。ギリシャから欧州連合(EU)に非加盟のマケドニア、セルビアを通過し、再びEU加盟国のハンガリーに入って西欧を目指す新たな「バルカンルート」が脚光を浴びたためだ。

 トルコから目と鼻の先のギリシャの島に渡る経路は、一度の転覆事故で数百人の犠牲者を出すイタリアへの密航というそれまでのメインルートに比べて、命の危険が少ない。迷っていた人々の背中を押した。

 ナチス時代の大量虐殺(ホロコースト)への反省から、難民受け入れに積極的なドイツ。それでも、9月に入って到着する人は毎日数千人規模に達する。保護施設が全く追いつかず、各地で新設が続く。

 政府は、「年間50万人なら受け入れ可能」(ガブリエル副首相)と表明するが、州や地方自治体の難民対策費が80億~100億ユーロ(1兆〜1兆3千億円)に上るとの予想もある。一国で多くの負担を引き受ける形が続けば、受け入れを支持する今の世論とは裏腹に、国内で異論が高まるのは避けられない。

 そもそもギリシャに上陸した難民らがいくつもの国境を越えてドイツを目指すのは、経済状態もさることながら、同じEU内でも難民の地位が認められる可能性や、定住への支援に大きな差があるからだ。

 ドイツではシリア出身ならほぼ難民の地位が得られる。一方、ギリシャは難民審査の遅れや受け入れ施設の劣悪さを欧州人権裁判所に指摘された。ハンガリーに至っては「紛争地から遠く離れた欧州に来るのは、安全ではなく“よい生活”を求めているからだ」(コバチ政府報道官)と主張。紛争地出身でも短期間で難民申請を却下できる法律を8月に発効させた。

 EUは9日、計16万人の難民受け入れを経済規模や人口に応じて加盟国に割り当てる案を発表した。しかし「難民受け入れは、豊かな西欧の役目」という意識の強い東欧の一部が強く反発。逆に受け入れに積極的な国は、拒否する国に財政的なペナルティーを科すよう主張する。

 押し寄せる難民が、ギリシャへの財政支援問題で生じた欧州内の亀裂を広げつつある。

AERA  2015年9月21日号より抜粋