浅田真央が氷上に帰ってきた。10月の復帰戦に向けて、ファンの期待は高まる。だが当の本人は、「平常心」「いつも通り」という言葉を繰り返した。そのこころは――。
2時間半に及ぶショーの大トリで浅田真央(24)の名前がコールされると、会場の空気が変わった。ショーというより競技の緊張感。小道具をセットするために他の演技者よりも長く暗転が続くと、待ちきれない観客がささやく声でざわついた。7月22日、札幌・真駒内セキスイハイムアイスアリーナで開かれたアイスショー「ザ・アイス」初日のことだ。
現役続行宣言から2カ月でのショー復帰。佐藤信夫コーチとともに本格的な練習を1年ぶりに再開したのは5月のことだ。直後の会見では、
「最低限、昨季(13―14年)のレベルまで戻さないと試合に出ることは難しい」
と、世界最高峰の技術レベル、つまりトリプルアクセルや連続3回転ジャンプを成功させることを目指すと宣言。シーズン初戦に10月3日のジャパンオープンという早い時期の試合を選び、グランプリシリーズの中国杯(11月6~8日)とNHK杯(同27~29日)にエントリーした。6月にはカナダ・トロントに渡り、今季のプログラム2曲と、ショー用2曲の計4曲を、わずか10日間で制作するなど、急ピッチで準備を進めてきた。