安全保障関連法案の国会審議が始まったが、議論はかみ合わない。かつて安保論議をたたかわせた2人が、安倍政権の姿勢を批判する。(聞き手/朝日新聞社・林尚行、構成/編集部・宮下直之)
――安倍晋三首相は、自衛隊が海外で米軍などに後方支援できるようになることで、抑止力が高まる一方、自衛隊が戦闘に巻き込まれるリスクは「変わらない」としています。
山崎:リスクの面で特に強調したいのは、国際平和支援法案に基づく自衛隊の後方支援活動です。後方というのは戦闘の前線と一体で、つまり兵へい站たんです。ですから、敵軍は必ず兵站基地である後方をも襲う。
そのとき、自衛隊は武器を使用して防戦する。そうなると、憲法が言うところの武力行使になる。武力行使になれば、それは戦闘行為になるわけで、そこで死傷者が出ないなんて考えにくい。ですから、リスクが高まることは間違いありません。だから私は、自衛隊を後方支援に出すこと自体に反対です。
岡田:同盟関係があることで、抑止力は高まるでしょう。そのことは否定しません。一方、自衛隊の活動範囲を広げることで高まるリスクもある。重要なのは、同盟強化で高まる抑止力とリスクを比較しながら議論をすることです。
それを「戦闘への巻き込まれ論は的外れだ」と、一言で片づけようとする安倍さんには非常に苦労します。法案上は、戦闘が行われている現場ぎりぎりまで自衛隊は武器や弾薬、武装した兵士の輸送もできるようになるわけですから、襲われるリスクが高まらないはずがない。そうした当たり前のことすら認めないから、議論が深まらない。
●滑稽な議論をまことしやかに
――集団的自衛権が行使できる事例に関して、いくつかの例外も明らかになりました。
岡田:中東・ホルムズ海峡の機雷掃海や、敵の誘導弾の基地を攻撃する事例などですね。ただ、この議論には危うさがあります。政府に、なぜそれが例外なのかと質問すると、こうしたロジックだから例外になるといった説明の仕方ではなく、単に例外にしますと言うだけなんです。これでは、政府の都合で次々に例外が出てくる可能性がある。
山崎:機雷掃海に関しては、日本は湾岸戦争で実施したことがあるんです。戦争終結後、現行法制で行ったんですよ。新しい法律を作ったんじゃなくて。だから今でも活動できるんです。ただし、戦争中には行けません。機雷掃海というのは、国際法で武力行使にあたるからです。