働きながら子育てし、次の目標に「政治家」を掲げる女性たちがいる。身近で感じた課題を最も身近な自治体で解決したい。その情熱で、選挙に新しい風を吹かせる。
男性たちの選挙と大きく違うのは、ママたちは一日24時間のすべてを活動に費やすのが難しいということだろう。埼玉県越谷市議選に向けて準備中の2児の母、山田裕子さん(32)は、辻立ちを一日1回に制限した。
「朝も夜もやりたくて歯がゆい思いがある一方、子どもへの罪悪感を覚えることもある。それは働いていた時と同じです」
それでも、挑戦で得るものは大きいと山田さんは話す。近所のママに息子を預かってもらった時のこと。申し訳ない気持ちで迎えに行くと、「子ども同士で遊んでくれて楽だった」 と喜んでくれた。忙しい山田さんのためにと、夕食をカバンに詰めていてくれたことも嬉しくて涙があふれた。今では逆に彼女の子を預かることもある。
「私たち世代は頼るのが下手。隣の人に少しお願いできたらうまくいくことがたくさんある。互いの困っていることをさらけ出し、助け合うことが政治参加の一歩なんだと気付きました」
政治家に必要とされる「カバン」を補うのも工夫次第だ。山田さんの事務所では、ママたちが手作りしたヘアゴムや体操着入れ、古着などが格安で並ぶ。販売収入がカンパに回る仕組みになっている。
市民団体の代表として選挙に臨む山田さんだが、市民活動を始めたのは2人目妊娠中に起きた東日本大震災がきっかけだった。ママたちが放射能汚染対策を市に申し入れ、市政が変わっていくのを目の当たりにした。10年経営したリラクゼーションサロンが駅ビル改修で閉店した昨年、候補者探しの話があり、「政治家」が次の目標になった。
※AERA 2015年4月20日号より抜粋