電話での話し方、来客への対応、現場での情報収集…。あらゆることについて、自分の行動をコピーしてもらえるよう、この部下の前でわかりやすく示す。言葉で説明すると上から説教しているような構図になり、部下の不安は膨らんでしまうかもしれない。言葉ではなく行動で「教える」ことが大事だと心得ている。
テニスの壁打ちを繰り返すように、フォームを反復練習することで、ビジネスにおける「型」を身につけてもらう。それができたら次は「中身」だ。人材育成事業などを手がける「BOLBOP」CEOの酒井穣さんは、著書『はじめての課長の教科書』で、ビジネスパーソンにとって大事な中身とは、「潜在能力」「思考プロセス」「モチベーション」の三つの要素だと説く。これらを「質問」の力で、引き出し、伸ばす。管理職が部下に施すコーチングだ。
答えは必ず部下自身の中にあるから、それを引き出す。決して外から押し付けの答えを教えるのではない。そのために気をつけたいのは、「アドバイス、指示、提案は行わない」である。上司はつい、「こうするべき」と答えを言いがちだ。だが、「部下が自らの力で考え、答えを導き出す」ことが重要。
※AERA 2015年4月6日号より抜粋