安倍政権が導入を進めている「新しい働き方」が、波紋を呼んでいる。一定基準を満たした従業員に残業代などが支払われない「高度プロフェッショナル制度」を柱とした一連の労働関連法で、労働側からは「残業代ゼロ制度」だとの声もあがっているという。
通常、残業には時間外手当が、休日や深夜勤務にも相応の手当が支払われるが、この制度下では年収1075万円以上の専門職など、対象となる労働者には支払われない。
現場で働く人たちは、これをどう考えているのか。
「この制度は、管理職にとってはありがたい面もある」と言うのは、情報通信機器メーカーで生産技術チームを率いる男性(52)。男性が勤める会社は、従業員の健康に配慮し、月60時間以上の残業を規制する。だが日頃からメンバーは月50時間程度の残業をしており、納品前には60時間超えは必至。でも規制を優先すると納期に間に合わず、困っているという。
「部下の健康は心配。でも納期を守らねばならない管理者にとっては、この制度にはメリットもある」
この男性管理職が勤める会社には海外に関連会社があり、類似の制度をすでに導入している会社もある。彼らは、忙しいときはがむしゃらに働き、閑散期はプライベートを充実させるなど、働き方に「メリハリ」があるという。その意味で、男性は「一労働者としては本制度に期待するところもある」と言うが、そのためには働き方を抜本的に変えねばならないとも考える。
「海外では一人ひとりの仕事や成果が明確なので、それが終われば堂々と休める。だが日本ではチーム作業が多いため、割り切って休みづらい」
※AERA 2015年4月6日号より抜粋