保育園開園と同時に子どもを預け、ダッシュ。究極の時間管理で、管理職と2児の子育てをやり繰りする。こんな働き方を、会社もサポートする。
荒木友紀(38)にとって、「黄金の朝タイム」を捻出するための逆算の時間管理が、管理職と、長男(8)、長女(5)の2児の子育てとを両立するための鉄則だ。
4時50分、起床。朝ごはん作り。5時40分、子どもを起こす。朝食。6時50分、保育園へ到着。
「1分狂うだけで、予定の電車に乗れないんですよ。だから保育園が始まる10分前から園の中に入れてもらって待機し、時計を見て7時『ちょうど』の表示を確認したら、子どもを保育士に受け渡して、駅へダッシュする。園にはもう何年も、このやり方を認めてもらって、定着させてしまいました」
通勤は片道1時間ほど。満員電車でメールチェックをすませ、一日の業務を頭の中で整理する。オフィスの席につくのは、朝8時15分。そこから午前10時まで集中して、自分の業務を片づける。部下からの相談や打ち合わせなどが続くコアタイムは15時までと区切り、来客などの予定も、なるべくその時間帯で調整する。
荒木はカルビー入社以来、商品企画を担当してきた。昨年4月に、小麦粉や野菜などを原料とする商品を扱う「スナック部」の課長に昇進した。以前と同様、子育てのために16時30分までの時短勤務を選択している。イレギュラーなことがない限りは、17時までには仕事を片づけて会社を出る。
「管理職になっても、子育てのために時短勤務を続けていられるのは、会社の制度面の追い風もありました」
カルビーでは、ダイバーシティーを経営上の重要な戦略と位置づけ、2010年度から女性の活躍推進に注力する。女性管理職候補生対象のキャリア研修を定期的に開催。週1日の「早く帰るデー」の実施、在宅勤務制度導入など、従業員全体の働きやすさを底上げする試みも実施する。その結果、女性管理職の比率が20%になり、子育て中の女性管理職は15人(15年4月見込み)と、荒木のような働き方をしている管理職は多数いる。本部長クラスの女性で、時短勤務を選択しているケースもある。
子育てで制約のある荒木を課長職に抜擢した、部長の宮倉裕幸(47)は、彼女の働きぶりをこう見ている。
「能力はもともとある。子育てとの両立の部分で、若干不安はあったけれど、成長ぶりはすごい。縦軸に、家庭も含む日々のタスクを置きながら、横軸に商品の発売までの全体管理をしっかり見ている。『もうちょっと僕に頼ってくれてもいいんだけど』というぐらい。とにかく時間の使い方がうまい」
一見おっとりした雰囲気だ。 部下の木本知甫(29)は言う。
「時間はないはずなのに、『今、大変!』っていうオーラが全然出ていない。だから相談しやすいし、相談した途端に、パッと動いてくれる」
※AERA 2015年3月30日号より抜粋