2014年末にタイで行われた、国際卓球連盟(ITTF)ワールドツアー年間王者を決めるグランドファイナル。ここで、6種目中4種目で日本選手が優勝するという「異常事態」が発生した。入賞者を含む19人の獲得賞金は4800万円を超え、女子シングルスで優勝賞金約1180万円を手にした石川佳純(21)はこうつぶやいた。
「こんなにもらったことない」
女子ダブルスを制した伊藤美誠(みま)と平野美宇の14歳ペアは、賞金が約500万円だと聞いて息をのんだ。2人が目を丸くして口をあんぐりと開けた写真は、多くのメディアに掲載された。
今大会は中国が不在だったとはいえ、あまりにも大きな前進。どちらかといえばマイナー競技のイメージがあった卓球がいま、「稼げるスポーツ」に変貌しつつある。
1月発表の世界ランキングでは、男子はエース水谷隼(25)の5位を筆頭にほとんどの選手が順位を上げ、100位以内に11人が名を連ねた。女子では、エース石川が4位と自身最高位を記録し、100位以内に17人がランクインしたうえ、そのうち中学生4人、高校生4人と若手が台頭。
躍進の立役者が、ITTF執行副会長でもある前原正浩・日本卓球協会専務理事(61)だ。卓球が初めて五輪種目になった1988年ソウル五輪から3大会、日本代表監督を務め、「勝てない時代をもがいてきた」。