2007年7月場所が横綱としての初土俵。本場所の休場はゼロで、大関時代を含め歴代1位の47場所連続2けた勝利を継続中。豊富な基礎稽古でつくり上げた頑丈な体が、白鵬の成績を支えている/1月13日、両国国技館 (c)朝日新聞社 @@写禁
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2007年7月場所が横綱としての初土俵。本場所の休場はゼロで、大関時代を含め歴代1位の47場所連続2けた勝利を継続中。豊富な基礎稽古でつくり上げた頑丈な体が、白鵬の成績を支えている/1月13日、両国国技館 (c)朝日新聞社 @@写禁
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 巨人、大鵬、卵焼き――。不滅の記録とされた昭和の大横綱の最多優勝回数を、白鵬が塗り替えた。強さの源泉は、どこにあるのか。

 2015年。30歳になる白鵬は、「昭和」を象徴する大横綱を超える記録を残した。なぜこんなにも強いのか。元小結で大相撲解説者の舞の海秀平さんは、こう解説する。

「膝の角度や腰の備え、上体の角度。どの体勢で相撲を取ればベストなのかを、誰よりも知っている。これは教えられるものではなく、本人の感性です。無駄がなく、効率良く相手に力をぶつけられる。他の力士に対しては、なぜそんな動きをと疑問がわくけど、白鵬にはそれがない。だから、力ずくで勝っているようには見えないんです」

 強さを裏付けるデータがある。立ち合いを分析してきた中京大学の湯浅景元教授によると、白鵬の飛び出しの最高速度は毎秒4メートルに達し、過去30年で分析した力士の中では千代の富士を抑えてトップ。衝撃力は他の力士の平均値の1.35倍に当たる608キロに上った。

 このスピードは、陸上男子100メートル世界記録保持者のウサイン・ボルトのスタートの平均値に匹敵。湯浅教授は、「踏み切るところだけを見れば、ほとんど一緒。ただ、速く動くための筋肉は衰えも早く、30代になってどんな立ち合いをしていくのか、興味があります」と横綱の“成熟”を注視する。

 努力の才能も備わっているようだ。土俵での稽古は減っても、「土俵の外では誰よりも汗をかいている」と相撲ジャーナリストの荒井太郎さん。

「四股、すり足といった基礎稽古は土俵で相撲を取るよりも、ある意味ではきつい。それを我慢して継続するには、肉体的にも精神的にも強くないといけないんです。他の力士よりも、倍の量は軽くこなしていますよ」

 手にしてきた賜杯は、生まれ持ったセンスを鍛錬によって磨いた賜物なのだ。

AERA 2015年1月26日号より抜粋