子どもを連れて、海外に赴任する。仕事と育児の両立に、環境や言語の壁が加わる。負担は大きいが、それでも諦めないで挑戦してほしいと、経験した女性たちは語る。
2012年に当時1歳の長男を連れ、東南アジアの政府系機関に赴任した女性(34)は、感覚的な責任の重さは「日本の10倍」と話す。ベビーシッターとは現地語でやりとりするしかないなど、仕事だけでなくプライベートの責任ものしかかった。それでも海外勤務を望んだのは、やりがいを求めたからだ。育児休業後の時短勤務中は、重要な事業でもアシスタント。責任や決定権のある立場から遠のき、次々と海外に行く同僚に取り残されそうでもどかしかった。
「子どもがなじめずに任期半ばで帰国することになったとしても、私が頭を下げれば済む話。チャンスをもらえたからには、走りながら調整してみよう」
いまや十数人の部下を束ねる管理職だが、毎日午後7時半にはキッチンに立つ。夫も今年、仕事を調整して移住してきた。
子連れ海外赴任経験のある女性社員が9人いる日産自動車は、「性別や家庭の状況にかかわらず、特別扱いしない」がモットー。赴任の機会も支援制度も平等で、住宅補助をベビーシッター代に充てるなどの「運用」を認めている。
05年に子連れ赴任第1号として、当時7歳と1歳の兄妹を連れてブラジルに赴任した小林千恵さん(46)は、「期待に応えようとするとつぶれる。気負うのはやめよう」と決めた。もし両立が難しければ「やっぱりできません」と堂々と帰ろう、と。現在はダイバーシティディべロップメントオフィス室長の小林さんは言う。
「やってみてダメなら助けを求めても、ギブアップしてもいい。子育て中だからと諦めないで。チャンスは誰にでもあります」
※AERA 2015年1月19日号より抜粋