
アルバイトを理由に内定を取り消されたとして、大学4年の女子学生(22)が、日本テレビを提訴した。就職に「OK」「NG」のラインはどこにあるのか。
訴状によると、この女子学生のアルバイト先は「母の友人の関係者が経営する小さなクラブ」。短期間のお手伝い程度だったというが、「特定のアルバイト経験が就職に悪影響を及ぼすことがありうる」ということ自体、驚きではなかったか。HRプロの寺澤康介社長は言う。
「本来、アルバイト経験に関する質問は、そこから何を得たかを判断する材料。ですが、大手企業の多くは、いわゆる水商売のアルバイトがわかった時点で、採用をためらうようです」
もちろん、職業に貴賤はないが、金融などで長く人事をつとめた30代の女性も、同様の認識だと話す。採用は、人事担当者、部長、役員、最終的には社長など、多くの人の目を通して行われる。その中に1人でも「偏見」を持つ人がいると、内定には至らないのが現実だという。
人事担当者の前には「入社後のリスク」も立ちはだかる。
「入社後に配属した部署でアルバイト経験が問題視されたら、人事担当者へのクレームになる可能性がある。『厳選採用』の昨今、こうしたリスクは取りにくいのです」(前出の30代女性)
学生時代のアルバイトとして人事が考える「OK」「NG」の境界線はどこにあるのか。
複数の専門家によると、男女問わず、異性とともに席に着き飲酒することが前提の接客業は敬遠されることが多い。一方、ミニスカートや水着などを着ることが多く、異性の目にさらされることが多い仕事でも、レースクイーンやコンパニオンなどは不問のようだ。
そもそも、厚生労働省は「公正な採用選考について」と題したガイドラインで、従業員を雇用する事業主に対し、公正な採用のためには「応募者の適性・能力とは関係ない事柄で採否を決定しない」こととし、「応募者の適性・能力に関係のない事柄について、把握しないようにする」ことを推奨している。「把握すれば結果としてどうしても採否決定に影響を与えることになってしまい、就職差別につながるおそれ」があるからだ。
※AERA 2014年12月1日号より抜粋