体操界の新たなエースと目されるスーパー高校生・白井健三。彼の才能を伸ばした環境とはどんなものだったのか。
両親に感謝していることは?の質問に、白井健三(17)は即答した。
「あーだこーだ言わず、ほったらかしにしてくれること」
悩むことなく、すぐに言葉になるのは、常日頃から実感しているのだろう。
「僕、しっかりしてると言われるけど、体操やってるとき以外はすごくだらしないんですよ」
いたずらっぽく笑う白井家の末っ子は、昨年の世界体操競技選手権男子ゆかで、日本体操史上最年少で金メダル。成功させた後方伸身宙返り4回ひねりなど三つの新技にシライの名がつけられた。日本体操界の次期エース候補は、天才・内村航平に昨年「種目別では勝てない。憎たらしい」と嫉妬されたほどだ。
白井が育った鶴見ジュニア体操クラブの代表でコーチも務める父・勝晃(まさあき)(54)は語る。
「外では信頼できる他人に任せ、家では思い切り甘やかす。それが我が家流です」
例えば、白井はむいたバナナの皮もほったらかし。親が「もう、だらしない!」と言いながらゴミ箱に持っていく。
「私らが体操の指導者でなければうるさく言うと思う。でも、彼が外で膨大なエネルギーを放出しているのを知っている。家ではゆっくりさせてあげたい」
同じく体操コーチでもある母・徳美(のりみ)(50)は、三つずつ違う男ばかり3兄弟を必死に育てていたころ、幼稚園の先生から「精いっぱいかわいがって。親から愛されているという気持ちがあれば、大きくなった時に平気で外に出ていける」と言われた。
「3番目だから、ただただかわいいだけだった。健三には、すごいね、大丈夫だよ、としか言ってなかった」
(文中敬称略)
※AERA 2014年6月30日号より抜粋