一律で課税されるはずの消費税。しかしネット通販の業界では、これを回避することができる企業もある。
電子書籍などを国内業者から買うと、8%の消費税がかかる。一方、海外のネット通販業者から買えば、消費税はゼロ。同じ千円で販売した場合、海外業者は消費税分をもうけにすることができる。
ネット通販大手の米アマゾンでは、通販業務は米シアトルにある「アマゾン・ドット・コム・インターナショナル・セールス」が行っている。そのため日本の消費税は課税されない。
元財務省国際租税課長で、国際税制の盲点を指摘する『タックス・ヘイブン』(岩波新書)の著者、志賀櫻弁護士は、
「多国籍企業は国ごとに違う税制の間隙を縫って、合法的に徴税を回避する。今や国際問題になっています」
経済協力開発機構(OECD)は昨年、グローバル企業の税の抜け道を封じるため、「税源浸食と利益移転(BEPS)に関する行動計画」を打ち出した。経済活動が行われている場所で課税することで各国が協調しよう、と呼びかけるものだ。
4月17・18日には都内で「OECD消費税グローバルフォーラム」が開かれた。80カ国以上が参加し、国境を超える取引の課税権は消費が行われる国にある、という原則を確認した。つまり、本社やサーバーが米国にあっても、日本の消費者が電子書籍を買えば、日本政府に消費税を納める、ということだ。
政府税制調査会も、ようやく重い腰を上げて動きだした。OECDの原則に合わせ、消費税法を改正し、2015年度税制改正大綱に「消費地での課税」を盛り込む構えだ。
こうした動きのなかで、ある変化が起きた。楽天が「インターネットサービスにおける公正な消費課税を求める連絡会」に加入を申請したのだ。連絡会のメンバーは、
「驚きました。楽天も課税逃れをしていたのに」
12年、カナダの電子書籍会社koboを買収した楽天は、国内の電子書籍などの注文をkoboにつなぐことで、消費税をゼロにしている。楽天の広報担当は「微妙な問題なのでノーコメント」と話すが、幹部の一人は、
「アマゾンに対抗するためkoboを買収したが、税法が変わりアマゾンが税金を払うようになるならウチも払う、ということだ」
と打ち明ける。
税の不公平に人々の目が集まり、批判の矢面に立たされるリスクを回避した、と業界関係者はみている。
※AERA 2014年5月5日―12日合併号より抜粋