いま日本の多くの企業が、ダイバーシティー(多様性)は成長のカギであり、特に子育て中の女性社員の活用は必須で、そのためにもWLB(ワークライフバランス)の確保が欠かせないという「認識」を持つ。だが現実には、多くの日本企業で働く人々は長時間労働に縛られ、それができない子育て社員は何かを諦めなければならない。先進的な外資系企業には、その壁を取り払うための工夫や風土がある。
ドイツの高級車メーカー、メルセデス・ベンツ日本には15種類もの多彩なWLB関連の制度がある。残業などの超過勤務時間を「貯金」し、余裕のあるときに「出勤扱いの休日」に振り替えられる「ゼロ勤務休暇制度」や、子育てサービスなどを利用した際の料金を補助してくれる「カフェテリアプラン」……。企業広報課マネージャーの河野綾さん(41)は、それらをフル活用して、2人の子育てをしながらキャリアを積んできた。
広報という仕事柄、夕方から取材対応があることもある。週1回は夕方3時間、家事サービスを頼み、カフェテリアプランを利用して補助を受けている。金銭的な負担軽減以上に、家事サービスを利用するきっかけになったことが大きい。
「制度がなければサービスを利用しようという発想がそもそもなかった」
※AERA 2014年4月21日号より抜粋