
太陽光や風力による発電を手がける全国の市民グループが3月11日、「ご当地発電ネットワーク」を結成する。もう一つの名を「みんなの電事連」という。
知っての通り、電事連は大手電力10社の全国組織「電気事業連合会」のことだ。「電気事業に関する知識の普及、啓発および広報」を目的に、潤沢な資金を広告や政治献金、研究助成金に注ぎ込み、原発の“安全神話”の旗を振ってきた。その向こうを張って、脱原発の市民発電が手を結ぼう、という試みだ。呼びかけ人の一人、会津電力社長の佐藤彌右衛門さんは言う。
「地域発電はどこも素人が手探りで始めたところばかり。ネットワークで支え合い、原発に頼らない確かな未来を築きたい」
会津電力は、8月までに出力2.5メガワットの太陽光発電設備を稼働させる。やがては、会津の豊富な水資源や森林を生かし、水力やバイオマスの発電を手がけたいという。
佐藤さんは、1790(寛政2)年から続く大和川酒造店の9代目。日本地酒協同組合の理事長で、地方の造り酒屋が連携して地酒ブームを起こした実績を持つ。地元の水やコメを使う個性的な酒蔵が、大量生産の大手が握る販路に食い込んだ経験を、電力にも、というわけだ。
昨年7月、山口県萩市の澄川酒造場(澄川宣史代表)は、豪雨災害によって酒造所が水没した。その際、各地の造り酒屋が救援に駆けつけた。大和川酒造は、仕込み用の酒米を失った澄川に、会津の山田錦を届けた。
澄川が再建する酒造所の屋根には、太陽光パネルが50枚ほど張られる。運営するのは「市民エネルギーやまぐち」。地域の有志が出資した「地域に貢献する非営利型株式会社」で、利益や配当は目的にしていない。山口県内に26カ所の太陽光発電施設を設置する予定で、坂井之泰社長はこう力説する。
「大事なことは地域におカネを回し、仕事をつくること。電力も地産地消ならば様々な雇用が生まれる」
※AERA 2014年3月17日号より抜粋

