大手予備校「河合塾」教育教材開発部数学科チームの谷口直美サブチーフは次のように分析する。
「現行のセンター試験の数学は数年かけて安定し、学習成果がしっかり測れる出題が多くなりました。新課程でもその傾向が引き継がれるとよいと思います。今回教科書の内容に含まれてセンターでも出題されることになった『整数』は、これまでも東京大学や一橋大学の2次試験で出題されており、かなり難しい分野でしたので、受験生は要注意です」
さらに劇的に変わるのが理科だ。科目名が現行の「物理・」などから「物理」「物理基礎」などに変わる上、従来の6科目から8科目に増える。しかも、現在東京大学や京都大学など多くの国立文系志願者が「化学・」など1科目(60分)の受験を義務づけられているのに対し、新課程では、「化学基礎」「生物基礎」(各30分)など基礎2科目が必須となる大学が多く、受験生の負担が増える。
大学入試センターは昨年11月、来年からのセンター試験で行う数学と理科の「問題例」を発表した。ところが、理科では、基礎的な分野の理解度を測る基礎科目の問題例が全く示されなかった。河合塾は一層の情報公表を求める意見書を同センターに提出した。
河合塾・同部理科科チームの藤本幸重サブチーフは、こう指摘する。
「理科については情報が不足しています。『基礎』は現行のセンター試験よりも出題範囲が狭まることで取り組みやすくなると予想されますが、文系の受験生がどこまで勉強すべきなのか、生徒や高校にとっては不安でしょう。新課程のセンター試験も出題傾向が落ちつくまでに数年かかる可能性があります。まずは本番を想定した模試などで対策を立てることが必要です」
受験の「プロ」でさえ五里霧中なのだ。