ほほえましい父と子の時間も、平日昼間だと「白い目で見られる」と話す男性は多い(撮影/倉田貴志)
ほほえましい父と子の時間も、平日昼間だと「白い目で見られる」と話す男性は多い(撮影/倉田貴志)
この記事の写真をすべて見る
男性の育休取得を促そうと、厚生労働省は育児休業給付金の引き上げを検討している(撮影/倉田貴志)
男性の育休取得を促そうと、厚生労働省は育児休業給付金の引き上げを検討している(撮影/倉田貴志)

 イクメンという言葉が定着し、安倍晋三首相が女性の活用を訴えても、2012年度の男性の育児休業取得率は1.89%。過去最高だった11年度の2.63%から大幅に落ち込んだ。子どもを持つ男性の家事・育児は1日平均約1時間(「社会生活基本調査」11年)で、00年前後の欧米諸国に比べ3分の1程度。イクメンと二極化し、家事・育児ゼロ時間の「ゼロメン」が圧倒的多数だ。それこそが、女性の出産退職の元凶ともなっている。さらに育児をする男性たちへのハラスメントも根深い。

 大手総合商社の管理職の40代男性は、同世代の半数が「ゼロメン」だと感じる。ある日、隣の部署の30代前半の男性が子どもを保育園に送るために朝7時半からの会議を欠席した。夫婦共働きで、打ち合わせの予定を断ることも何度かあった。彼がいない飲み会では同僚たちが「あいつ使えねえ」「保育園なんて、ばかじゃねーか」と足を引っ張る。仕事の能力が低いとは思えなかったが、次の人事異動で年配社員ばかりの非営業部門に回された。育児を優先して出世コースを外されるのは、よくあることだ。

「部下が海外赴任を断ったり、育児で休みがちになったりすると、部下をコントロールできなかった上司の評価も下がる。だから育休を取りたいと言うと、付き合いの少ない上司も手のひらを返したように『君のためだ』と阻止してきます」

 IT系企業勤務の40代男性は、育児休業の取得を上司に相談すると、こうなじられた。

「ビジネスという戦場から逃げるのか。敵前逃亡は昔なら銃殺刑だぞ。故郷に置いてきたかわいい子どもの写真を胸に戦うのが真の男だ」

 確かに、他社との競争で社内がピリピリしている時期だったが、時代錯誤な論を振りかざす上司の言葉は理解できず、話はかみ合わなかった。

AERA 2013年11月25日号より抜粋