レール異常の放置や脱線事故など、相次いで不祥事が報じられるJR北海道。政府はこの事態に強い姿勢で臨んだが、その背景には安全問題とは別の事情もあるようだ。
JR北海道の一連の不祥事がクローズアップされるきっかけとなったのは、函館線の大沼駅構内で同月19日に起きた貨物列車の脱線事故だった。この原因調査の過程で、本来はミリ単位で管理すべきレールの広がりや歪みを放置していたことが発覚。しかも、当初9件と発表されたレール異常は、冒頭の会見後も次々と発覚し、瞬く間に北海道全土で267カ所にまで膨れ上がったのだ。
こうした事態に、国土交通省はJR北海道への特別保安監査(立ち入り検査)の監査員を増強し、さらに30 日の会見では、菅義偉官房長官が経営陣の刷新にまで言及するに至った。
「鉄道の基本の基であるレール補修を放っておくなんて、この異常な企業体質には驚くばかりですが、それ以上に菅官房長官の言葉の強さに驚きました。JR北海道の特異さの一つに、労使問題があります。とにかく労働組合が強い。菅官房長官の発言は、その労組に対して発せられたであろうことがアリアリでした。会見を見ていたほかの記者たちも口々にそう言ってましたよ」(地元テレビ局記者)
確かに一連の不祥事が由々しき問題であることは間違いない。しかし菅官房長官の、ここまで怒気をはらんだ対応は何なのか。実はその背後に、官邸の“思惑”があるのだという。
「『労組潰し』ですよ。労組票といえば、民主党です。官邸はこれを機に、北海道の根強い民主票を何とかしたい。もう二度と下野することがないように、徹底的に潰しておきたいのです」(自民党関係者)
政権の意図が暗黙のうちに影響を与えているのか、一連のJR北海道問題を報じるメディアでも、労組の存在を指摘する論調が目立ち始めている。
〈労使の断層の大きさが背景にあると指摘する声も多い。政府関係者は「労働組合の存在が強くガバナンス(統治)が効いていない」と語る〉(9月25 日付日経新聞)
〈会社と労使協調路線をとる多数派の組合と、複数の少数派組合があり、その間の確執が社内で情報が伝わりにくい状況をもたらしているという〉(同26日付朝日新聞)
※AERA 2013年10月14日号