墨岡孝医師は「ネットに接する年齢が低ければ低いほど、依存症になるリスクも高くなる」と警鐘を鳴らす(写真部・時津剛)
墨岡孝医師は「ネットに接する年齢が低ければ低いほど、依存症になるリスクも高くなる」と警鐘を鳴らす(写真部・時津剛)
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 もしかしてうちの子も…。8月上旬、厚生労働省の研究班(研究代表者=大井田隆・日本大学教授)が発表した調査結果を見て、ヒヤリとした人も多かったに違いない。

 研究班が無作為に選んだ全国264校の中学・高校にアンケートを行ったところ、ネット依存の疑いがある子どもが、中学生の6%、高校生の9%、推計で51万8千人にも上ることがわかったのだ。

「予備軍を含めれば、全国で70万~80万人の子どもが該当するのではないでしょうか」

 そう話すのは、10年以上前からネット依存の治療に取り組む成城墨岡クリニック(東京都世田谷区)の墨岡孝医師だ。

 2000年代初頭から、ネット依存の問題はたびたび取りざたされてきたが、ここ数年で患者数が急増、傾向も変わってきているという。

「以前は、『ネトゲ廃人』と呼ばれるオンラインゲーム依存がほとんどでしたが、スマートフォンの普及によって、LINE(ライン)をはじめとするSNS依存の患者さんが増えています」(墨岡医師)

 都内の大学に通う女子学生Bさん(20)も、自分はネット依存ではないかと感じている。毎朝、起きるとカーテンを開けるより先に、ラインやツイッターなどSNSをチェックする。通学時はもちろん、授業中も食事中も、寝る直前まで友達とやりとりしている。

「気がつくと一日に100件くらい書き込んでいることもある」(Bさん)

 ある時、家にいても携帯を触ってばかりで、テレビをほとんど見なくなったことに気がついた。眠れない夜、〈何してる?〉と書き込むと、誰かが返信をくれる。いつのまにか朝になっていたこともあった。

「3日くらい寝なかったこともあって、さすがにヤバいんじゃないかと思ったんです」

 だが、Bさんのように自覚しているケースは少ないという。

 ネット依存専門の外来を持つ久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)には月に20~30件の相談が寄せられる。そのうち未成年は8割。患者が中高生の場合、本人に自覚がなく、保護者が相談にくることがほとんどだという。

「本人に病院に来てもらうまでが大変なこともあります。昼夜が逆転してしまい、学校に行けなくなるケースや、携帯を取り上げられたため、お金も持たずにネットカフェに駆け込み、無銭飲食して補導された子もいる」(同センターの中山秀紀医師)

 そこまでひどい状況は少ないが、学校から「授業中に異常なほど居眠りをしている」「遅刻が増えた」などと注意されて気がつくケースが多いという。

 どうしたら家庭で子どもの異変に気づけるのだろうか。02年から、子どもたちのネット依存予防に取り組んできた民間団体「エンジェルズアイズ」代表で情報教育アドバイザーの遠藤美季さんは、

「現実の世界に問題を抱える子はネットを居場所にしがち。友達と遊ばなくなったり、家族との会話が減ったりしたら要注意」

 と指摘する。目立って使用時間が増えたり、食事や外出に誘っても、ネットをしているほうがいいと断ったり、誕生日やクリスマスなどに何が欲しいかを聞くと、ネット関係のものを欲しがるようになったりしたら、ネット依存の可能性を疑った方がいいという。

AERA 2013年9月2日号