都内の公立小学校では、それぞれに独自の授業を打ち出すことで特色を出そうという動きが広まっている。一方で、その取り組みに学力は伴ってきているのだろうか。全国でもトップクラスの学力を誇る秋田県にアンケートを行ったところ、秋田市教委から届いた回答は、「学習指導要領の内容に加えて独自に力を入れているものは特にない」とのこと。学力の高さの秘訣はどこにあるのか、現場を取材した。
きれいに整理整頓されたロッカーに整然と並ぶランドセル。棚の隅にもチリひとつない。「こんにちは」と挨拶してくる秋田市立旭北(きょくほく)小学校の5年生たちは、「勉強? 部活ばっかりしてるよ!」「こっちに僕らの育てた稲があるよ」と、元気で好奇心いっぱいだ。
市教委学校教育課の大山裕さん(47)は言う。
「熱心なベテランの先生は多いですが、子どもたちは宿題くらいしかしていませんよ」
宿題とは、1年生から毎日提出する「家庭学習ノート」のこと。普通のノートに1日1ページ、それぞれが好きな勉強をすればいいというものだ。
5年生のノートを見ると、新聞記事を貼ってその背景を調べたもの、ゆで卵の作り方のレポート、苦手な漢字の練習、計算など、日々、子どもによってバラバラの内容が丁寧に綴られていた。
担任は、それらのノートにコメントを書いて子どもに戻す。八木澤徹・教務主任は、「一人ずつ異なる内容を見るのは当たり前で、負担に感じたことはありません」と言う。
「授業が始まるときは、筆箱は机の上に出さず、文房具は鉛筆2本に消しゴム、定規、赤青ペンだけ。ノートは、自由な書き込みをしやすいよう見開きで。授業の前にノートに“目当て”を書き赤で囲んで、何をしたら達成できるかをみんなで考えてから始めます。最後には内容の振り返りをして“まとめ”を書き、青で囲みます」
このような特徴的な家庭学習や授業の進め方を、秋田市では先生も子どもも「当たり前」に続けているというが、教員や住民の入れ替わりが激しい都心部では難しい事情もある。
※AERA 2013年7月1日号