田中真紀子文部科学大臣が、開学に向かっていた大学を突然不認可にしようとした騒動が波紋を呼んだ。田中大臣に対しては批判的な声もあったが、現在の大学が抱える問題をみていくと、そこには評価すべき部分もある。

「実際、これから大学をつくろうと思っていた学校関係者はビビリまくっているでしょうね。ただ、これまでの審査がザルで、そもそも認可しちゃいけないような大学が、審査をすり抜けて開学されてきたのは事実です」

 と言うのは、『下流大学に入ろう!』(光文社ペーパーバックス)などの著書がある大学研究家の山内太地さん。たしかに、虚偽の内容に基づいて審査を行い、そのまま認可されてしまった大学、教員の配置や年齢構成を開学までに適切にするように、という「指導」(留意事項)を山ほどつけられた大学など、問題のある新設大学は枚挙にいとまがない。

 もちろん、「教職員への強制わいせつ事件で実刑判決を受けた元理事長が、いつの間にか学校運営に復帰」など、あまりにも悪質な場合は、「不可」とされるが、原則はあくまで「事前規制」ではなく、「事後チェック」。大学設置基準が緩和された1991年ごろから徐々に増え始めた大学は、2000年代になり、少子化に逆行するように増加の一途をたどり、小泉改革華やかなりしころには、株式会社立の大学も含め、年10校以上が認可されていた。

 結果、現状では全国の私立大学の約46%が定員割れ。「高卒で就職できないから仕方なく大学に進む」という層が増え、大学進学率は上昇したが、定員を満たすには至らない。

「そもそも、偏差値45以下の大学を出た場合、有名企業に正社員で就職できる可能性はすごく低いんです。靴の磨き方や髪形の指導までして、なんとか就職させようと努力している大学もありますが、成功例ばかりではない。これほど地方経済が縮小しているのに、地方の4年制芸術大学や、資格に直結しない文系大学をつくっても、受け皿があるわけない」(山内さん)

 こうした低偏差値大学の学生確保は難しい。そのためオープンキャンパスで受験生に事実上の合格内定を出し、AO入試などを使って「フリーパス」で合格させる大学も珍しくなく、入学者の1割しか一般入試で入っていない大学もある。

AERA 2012年11月19日号

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