大地震が起きたとき、被災者への情報伝達、避難所の設置、電気・ガス・水道の復旧活動など、震災対応の司令塔となるのが自治体の庁舎だ。その庁舎の耐震性に、黄信号が灯っている。

 首都圏では首都直下地震が起こるとされ、最悪の想定ではマグニチュード7.3にもなり、1都3県で死者が1万1千人と想定されている。静岡県の駿河湾から九州東方沖一帯を震源域とする「南海トラフ地震」の切迫度も高く、国の有識者会議は、最悪の場合、20メートル以上の津波が8都県を襲い、30都府県で合計32万3千人が死亡すると発表している。

 自治体は防災・減災の中心的な担い手でもある。いざ大地震が発生すれば、事前に定めた地域防災計画に基づいて、被災情報の収集、被災者への情報伝達、消防隊への派遣要請、負傷者の把握と搬送依頼、避難指示や誘導、近隣自治体との連携、被災者への食糧や物資の提供、電気やガス・水道の復旧活動など、広範な業務を行う。

 だが、その各自治体の庁舎の耐震性と災害対応力が、どうにも心もとないのだ。

 本誌は、主要77自治体に、大地震や津波などで庁舎に被害が出るかどうかをたずねた。その結果、庁舎が大地震で倒壊したり崩壊したりする危険性のある自治体が、人口約120万人のさいたま市、100万人弱の千葉市、愛知県、京都市、東京都渋谷区など21自治体にものぼることが分かった。

 防災学者の室﨑益輝・関西学院大学災害復興制度研究所所長は指摘する。

「自分たちの庁舎は地震では壊れない、大きな被害を受けないという根拠なき思い込みが各自治体に蔓延(まんえん)している」

AERA 2012年11月12日号