■Arnis(アーニス=フィリピン)
フィリピンの伝統武術で、日本では「カリ」という名称が広まっているが、現地では「アーニス」「エスクリマ」と呼ばれている。ラタン製のカリスティックを用いて攻撃と防御を身につけていく。「シンプルだけど複雑。型にはまらない自由さがあります。動きが激しくないので、脳トレのような感覚で楽しんでいただけます」(大原聰さん)
高田馬場のスタジオで、日曜日に開催される練習に参加した。手渡されたのは「カリスティック」。約70cmのラタン製の棒で2本1組となっている。これを手に持ち、ペアになって双方で打ち合っていく。いくつかの型があり、他の人たちはテンポよく打ち合っていくのだが、私は初心者なので、「右後ろから振り上げて打ち、左の腰に下ろす。次は左で相手を受けて……」というように、かなりスローな動きで練習を開始。インストラクターがタイミングよく、「右上、左下」と声をかけてくれるので、少しずつ動きをつかめるようになってくると、がぜん楽しくなってくる。
「カン、カン、カン」という棒が当たる音も心地いい。私が取り組んでいるのは基本の型ではあるものの、私にとっては未知の複雑な動き。「赤上げて、赤下げないで白上げて」と間違えないように紅白の旗を上げ下げする「旗あげゲーム」をやっているような気がしてきた。とはいえ、これはゲームではなくて立派な武術。カリスティックを使った動きは、スティックをはずして素手で行った時の攻守の動きへと連なる。
そのことを知ると、カリスティックの型を通して対人戦の動きを学んでいる実感がわいてきて、やる気が高まる。激しい動きはないので、年齢を問わず始められる、敷居の低い武術でもある。しかもカリスティックの動きは頭を使うので、「脳トレ」にもぴったりだ。