帯津:なるほどそうですか。でも私がみているがん患者さんで、認知症の人はあまりいないなあ。認知症になるとストレスを感じなくて、がんになりにくいのかなあとも思っているんですよ
大井:もう一ついいところは、認知症が本当に進んでいくと、自分という意識がなくなっていく。そして死への恐怖もなくなってしまうように見えます。これは、最終末におけるひとつの適応とも考えられますね。非常に平静にニコニコしていられるんです。
帯津:おそらく認知症の人はあの世に行きかけているのかもしれないですね。この世とあの世を行ったり来たりしているわけです。
そう考えると認知症も悪くはないかもしれないですね。ただ、できるだけ周りの人に迷惑をかける時間を短くしたいという気持ちはあります。そのうえで、最後は認知症で終わるのも悪くはないですね。それもナイス・エイジングのひとつかもしれない。
今回、大井さんの話を聞いてそう思いました。ありがとうございました。
(構成/梅村隆之)
※週刊朝日 2020年3月6日号