「例えば、重い花粉症があるけれど、この時期に抗ヒスタミン薬を飲めない受験生や資格試験を受ける人、忙しく飛び回っているビジネスマンらに向いている治療かもしれません」(同)
花粉シーズンが終わったら検討したいのが、「アレルゲン免疫療法」だ。2014年にエキスタイプのシダトレンが、18年に錠剤タイプのシダキュアが保険適用となった。いずれも舌下に入れて溶かすなどして、体に吸収させる。
アレルゲン免疫療法では、アレルゲンを少量ずつ体に入れて、アレルギー反応を徐々に抑えていく。年単位という時間をかけて体質改善を狙う。こちらは月に1300円ほどかかる。
治療効果について岡本さんは、「最新の報告によると、約8割の人に効果が認められていて、薬を飲まなくてもよくなった人もいます」と話す。また、3年間治療を続けた人ではその後、治療をやめても一定期間、効果が持続するということや、再発しても治療を再開して1年ほど続ければ症状が出にくくなるということも、わかってきた。
「この治療はゴールデンウィーク明けごろ、花粉シーズンが終わったら始めるもの。11月までには始めたほうがいいでしょう」(同)
■花粉が出ないスギ
花粉症の根本原因、“花粉”を減らそうという取り組みも始まっている。
「『切って利用する』『植え替える』『出させない』という三つの柱で花粉発生源対策を推進しています」
こう話すのは、林野庁森林整備部の中村隆史さん。
わが国の森林面積は2505万ヘクタール。そのうち人が植樹した人工林は4割にあたる1020万ヘクタールある。この人工林の中でスギ林が占める割合は44%(444万ヘクタール)、ヒノキ林は25%(260万ヘクタール)。なんと人工林の約7割がスギやヒノキの林だ。
スギやヒノキの木は若いうちは花粉をそんなに作らないが、樹齢が20~30年以上になると本格的に花粉を作り始める。老木になっても花粉を作る量は減るとは限らないそうだ。