「こうしたスギやヒノキを伐採して木材としての利用を促し、代わりに花粉が出なかったり、少量しか出なかったりする品種の苗木や広葉樹に植え替える。また、花粉が飛散しないようにする薬剤の開発も進めています」(中村さん)
実は、自然界にはわずかな確率で、花粉を出さないスギやヒノキが存在している。それを開発者が見つけて、品質の良いスギやヒノキを掛け合わせてできたのが、無花粉の苗木だ。現在、この無花粉と、花粉の量が少ない少花粉を合わせると、210種類以上の品種ができているという。
この取り組みは、スギでは1990年代から、ヒノキは2000年代から始まり、現在は約半分の苗木が無花粉や少花粉のスギに替わった。ヒノキはまだ少ないが、それでも徐々に植え替えが進んでいるという。
「出させない」という取り組みについては、雄花を枯らすスギ黒点病菌の一つ、シドウィア菌に目を付けた。
「このカビはスギの花粉を栄養にしています。カビに感染したスギの雄花は枯れてしまうため、花粉が飛ばなくなります。ただ菌は雄花以外では生存できないため、周囲に影響を与えることはなく、スギの木を枯らすこともありません」(同)
この菌を製剤化してスギ林に散布すれば、スギ花粉が飛ばなくなる。国立研究開発法人森林総合研究所では、現在、実用化に向けて、他の生物(昆虫や動物、植物など)への影響や散布の方法、適正な濃度などを検討している。(本誌・山内リカ)
※週刊朝日 2020年2月21日号