「かゆみが強いときはまず、冷やしてください。それでもかゆみが引かないときは眼科へ。まぶたに塗り、かゆみを抑える軟膏が有効です」(同)

■最新治療
 昨年12月、従来の治療をしても症状が改善しない重症の花粉症患者(12歳以上)に対し、画期的な薬ゾレア(オマリズマブ)が保険適用となった。ゾレアは「抗体療法」と呼ばれる治療法の一つで、これまでも気管支喘息やアトピー性皮膚炎などの治療では使われていたが、花粉症で認められたのは世界初となる。

 この治療は花粉症で起こるアレルギー反応の“肝”の部分を抑える。アレルギーの発症メカニズムの研究を専門とする日本医科大学耳鼻咽喉科学講座主任教授の大久保公裕さんによると、次のようなメカニズムで薬が効くという。

 私たちの体には、異物(たんぱく質)に対して抗体を作って対処する免疫システムが備わっている。

 花粉というアレルゲンが鼻や目の粘膜から体内に入ると、それを認識したB細胞がIgE抗体を作る。この抗体が肥満細胞とくっつくと、次に花粉が入ってきたときに感作(特定のアレルゲンに対して生じる過敏な反応)が起こり、ヒスタミンやロイコトリエンといったアレルギー症状の原因となる化学物質が分泌される。それが血管や神経を刺激し、くしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみといった症状が表れる。

「ゾレアは肥満細胞にIgE抗体がくっつく部分をブロックします。これにより肥満細胞からのヒスタミンやロイコトリエンの分泌を抑えます」(大久保さん)

 花粉症に悩む人には朗報だが、この治療を受けるにはハードルがある。

 まず、対象が従来の治療が効かない重症患者に限られる点。治療を受けるには血液検査でIgEの量を測る必要がある。また、注射薬なので2週間(あるいは4週間)に1回、受診しなければならない。抗ヒスタミン薬との併用が前提だ。

 最大の問題は薬代だ。ゾレアは体内のIgEの量と体重によって投与量が決まる。1カ月にかかる薬代は、2週間に1回の投与で1万4023~11万1576円(健康保険の1~3割負担したときの値段)。

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