作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は医学部不正入試問題に見る「差別」を改めて問う。
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国のトップが自らの過ちを認めず、道理が通らない理屈(を屁理屈って言うんだよ)を並べ逃げ切ろうとする姿は、やはりじわじわと社会をダメにしていくのだと思う。入試差別をした医大の対応を見ていて、つくづくそう実感する。
新たに聖マリアンナ医科大での入試差別が明らかになった。2015~18年度を第三者委員会が調査した結果、いずれも志願票と調査書の評価で調整をしていた。その調整は年々過激になり、18年度は180点満点で、女性には80点(!)の一律減点をしていた。
聖マリは悪質だ。文部科学省が男女の合格率を調査したのは18年冬。その時点で第三者委員会の調査が求められていたにもかかわらず、「うちは差別していない」と助成金をまるまる受け取り、第三者委員会の結果公表に1年かけた。
「聖マリは、あやしい」
2年前、東京医科大の差別事件が発覚してすぐ、予備校関係者からそういう話は何度も聞いてきた。他にも昭和大、順天堂大があやしい、と言う元受験生が複数いた。まさに受験生の実感こそが真実だったのだ。それほどに聖マリも、順天も、昭和も、女性が少ない年が続いていた。予備校で上位の成績の女性が落ち、彼女よりも成績不振の男性が受かる、ということが起きていた。聖マリに関しては、2年連続で2浪以上の女性がほぼ受かっていない。
先日、年齢差別で不合格になった男性が順天を訴えた。本来ならば18年度に合格していたが、年齢が高かったために(と言ったって30代前半)、減点されたのだ。彼が訴訟に際し話したことが印象的だった。
「これまでも年齢差別、女性差別があると言われてきました。でもそれは都市伝説のようなものだと重く捉えていなかった。そのように私たちは差別に慣れてきた。もう、これ以上差別に慣れたくない」