──北陸新幹線は去年の台風による大雨で水没しました。影響は残っていますか?
「新幹線の10編成が水に浸かりました。そのうち8編成が東日本の所属車両で、2編成が弊社のもの。相当な泥水に浸かり、搭載した電子機器も水をかぶったため、使えなくなり、10編成とも廃車にします。新たに作らないといけないので、10編成納入するのに時間がかかっております。JR東日本の車両を回してもらって何とか定期列車便ベースでは災害前の状況に戻せましたが、臨時列車のベースではまだ100%戻せておりません」
──JR九州でも熊本地震で新幹線が脱線しました。大規模な災害への対策は?
「一つは自分たちの防災強度を上げていく取り組みをしなくちゃいけないと思います。例えば、土木構造を強化して雨に強い鉄道にする。地震のための耐震補強なども実施しています。阪神・淡路大震災以降、国の基準も変わり、鉄道各社は大急ぎで工事を進め、完成期に入りつつあります。それだけではなく、土を盛って高台になっている線路の耐震性を強化したり、豪雨対策として雨でも崩れないようコンクリートで覆ったり、岩盤に打ち付けて固定するような工事をして災害に強い設備を整備していかないといけません。さらに今後は豪雨で電気設備が浸からないように高いところに設置するなど検討を進めていきます」
──最近は台風、ゲリラ豪雨など想定外の災害が頻発しています
「台風があった14年、私どもは京阪神圏で一斉に計画運休をしました。これが国内では初めての計画運休で、結果的にあまり大きな台風が来なかったので、当時はお客様からお叱りを受けました。だが、防災関係の先生方から『これがタイムラインという考え方で、先手の災害対応の防御的手段なのだ』とマスコミを通じて仰っていただき、徐々に計画運休が浸透してきました」
──去年、東京でも台風で計画運休しました
「首都圏なんかは関西と違って規模が、人の数が違いますから、実際、大変だっただろうなとは思います。それでも社会の中で認知されつつあるのは冷静に対応いただいているということだと思います。私どもは05年に福知山線列車事故という極めて重大な事故を惹き起こした責任の重さを、痛切に感じております。被害者の方々の悲しみは時を経ても癒えません。『鉄道は安全なくしては成長なし』を肝に銘じ、全力を尽くしていきたいと思います」
(本誌・森下香枝)
※週刊朝日 2020年2月21日号