交通遮断措置が取られた中国・武漢市は人口1100万人規模の都市だが、交通機関の運行停止などで春節(旧正月)の飾り付けが施された繁華街からは人影が消えたという。
「街は静まり返っています。春節なのに、人通りはなく、店も閉ざされ、タクシーすらほとんど走っていません。ちょっと郊外に行けば、武装警察、軍が主要道路を警備しており、今から戦争が起こるのか、と驚くほどのものものしさです」(武漢市に住む日本人)
国際空港もある武漢市。中国では医療機関も充実している地域だという。
「街を歩くと大きな病院の前にいくつもテントが張られていた。新型コロナウイルスに対応して、院内感染を恐れて病院の外で受け入れているそうです。別の病院では受付前に長蛇の列ができ、院内に入り切れないほど患者で溢れている。武漢市周辺からも熱が出たと患者が殺到し、院内感染を恐れる病院のスタッフが逃げ出そうとするなど異様な事態です」(同)
武漢では患者の対応にあたっていた医師が1月25日に死亡するという衝撃的なニュースも。
「このままでは院内感染で爆発的に患者が増える恐れがあると心底、スタッフは怯えている」(同)
診察を受けることができない患者は自宅で薬を飲んで横になるしかないという。
「治療を受けず亡くなった老人も多くいます。そういう人たちは新型コロナ患者にカウントされていない。だから実際はもっと多くの死者、感染者がいるはず。おまけに人が集まると、感染が拡大すると葬儀も禁止されています。だから、亡くなったことすら周囲に伝わらない。結婚式、パーティーも実質的に禁止です」(武漢市民)
孤立した住民たちから食料不足で政府の支援を求める声が上がっている。
「マスクは軒並み売り切れ。一度使って捨てたものをゴミ箱から集めて売る人までいる信じがたい状況。スーパーも食料が不足している。買い出しに行こうと閉鎖されていない武漢市郊外へタクシーで出ようとしても、普段の10~20倍の料金を請求される」(同)
現地の日本法人で働く会社員がこう話す。
「多くの日系企業が春節に合わせて駐在員、その家族を一時帰国させていたので、助かっている。新型コロナの発生源は武漢にある海鮮市場です。この市場は海鮮だけでなく、肉も野菜も扱い、現地の日本料理店が食材を仕入れていた。武漢でも日本人が感染しているように思います」
(今西憲之)
※週刊朝日 2020年2月7日号より抜粋