イラスト:坂本康子(週刊朝日 2020年1月31日号より)
イラスト:坂本康子(週刊朝日 2020年1月31日号より)
イラスト:坂本康子(週刊朝日 2020年1月31日号より)
イラスト:坂本康子(週刊朝日 2020年1月31日号より)
イラスト:坂本康子(週刊朝日 2020年1月31日号より)
イラスト:坂本康子(週刊朝日 2020年1月31日号より)

 実生活の中でも、ネット上でも、「自分の正しさ」を振りかざして突進してくる人たちがいる。いま世の中に蔓延しているのは、名付けるならば「私は正論症候群」だ。その原因とトラブル回避策について、ライフジャーナリスト・赤根千鶴子氏が専門家に意見を求めた。

【イラスト】あなたは大丈夫?“正論症候群”の例をもっと見る

 高野さん(仮名・62歳)は東京郊外の中古一戸建てに引っ越しして間もないころ、ある紳士の訪問を受けた。

「このゴミ袋、お宅が出されたものですよね?」

 門の外から見知らぬ紳士が、高野さんが数分前にゴミ捨て場に出したばかりのゴミ袋を掲げる。

「はい、うちですが」

「紙ゴミがまざっているのが見えたから、お宅にお戻しします。今日は『燃やすゴミ』の日ですよ! 『紙ゴミ』の日ではありません。ハガキはミックスペーパーです。ちゃんと『紙ゴミ』収集の日に『紙ゴミ』として出しましょう!」

 一瞬唖然としたが、高野さんは素直に謝った。何せこちらは新参者だ。あなた、ゴミ袋からちょっとのぞいて見えたうちの名字の入ったハガキを引っ張り出したのですか、とも聞けない。

 妻が近所で聞いてきたことにはその紳士は70代前半で“決まり事”にはとにかくうるさい。ゴミ出しのほか、植木の敷地外へのハミダシや生活音にも敏感らしい。高野さんは妻に言った。

「まいった。とんだ世直し奉行だな」

「何言ってるの、奉行どころか“首領(ドン)”って言われているそうよ。あなた、余分なこと言って目をつけられないように気を付けてよ。首領は昔からこまめにブログもやっていて、遠回しにチクチク書かれることもあるそうだから」。高野さんは憂鬱でたまらない。

 サキコさん(仮名・61歳)は最近、同い年の友人たちの“正論ブチ切れ”傾向が気になってならない。つい先日も友人のアサコさんと買い物に出かけたとき、レジで彼女がブチ切れたことに驚いた。1202円支払うところで、レジの女性に小銭202円はないかと尋ねられたところ、「こっちはちゃんと2千円出してるでしょう!」「小銭がないときだってあるわよ!」。そしてブチ切れついでにアサコさんはサキコさんに同意を求めてくる。「ねえ、サキコちゃん。ねっ!」。(えっ、もしかして私に「いいね!」を求めているの?)サキコさんは苦笑いで通したという。

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