林:いや、うちの母は寝たきりで可哀想でしたけど、幸せだったのは父で、92歳で亡くなる2日前に「もう十分生きたから、何もするなよ」と言って、直前まで「文藝春秋」を読んでましたし、病院でテレビ見ながらスーッと死んじゃいました。あれはいい死に方だなと思って。
筒井:それはいいね。人間ができてるんだな。
林:いや、違います。何かで夫婦ゲンカしたときに、母が「今までさんざん家族に迷惑かけたんだから、死ぬときぐらい人に迷惑かけずに死になさい!」って孫の手でポンとたたいたのを覚えてますよ。そのとおりになりましたけど。
筒井:やっぱりそれは立派だ。
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(構成/本誌・松岡かすみ)
※AERA 2020年1月31日号より抜粋