なぜ差別的取り扱いをしたのか。

 第三者委員会は現役と浪人の区分については、医師国家試験の合格率が影響しているとみている。男女とも浪人生の方が合格率が低い傾向があるためだ。17年の拡大教授会の資料では次のような記載があった。

「特筆すべきは、現役生・1浪はストレート進級率、及びストレート国試合格率が高い値を示しているのに対し、2浪以上からは極端に悪い結果となっております。以上の状況に鑑みて、入試委員会では現役生の確保について検討を重ねてきました」

 入試委員会が国家試験の合格率を意識して、現役生の獲得をめざし、それが拡大教授会でも共有されていた。

 男性医師偏重の意識も指摘された。一部の調査対象者から次のように、女性よりも男性医師の確保が必要であるといった意見があったという。

「女性医師が増えると休職する医師が生じる可能性が高まり、現場で他の医師に負担が増える」

「診療科ごとに男女比の偏りがある」

「男性医師の方が激務に耐えることができる」

 第三者委は、こうした男性医師偏重の意識について改善を訴えている。

「女性が出産後も働きやすく、復職しやすい職場環境を整えることは社会的要請であり、医療界もその例外ではない。女性医師が積極的に活躍できる環境を整備していく必要がある」

 再発防止策として、入試に男性医師偏重の意識が影響を及ぼさないよう、入試委員に複数の女性委員を選ぶなどチェック機能の強化を促している。

 その上で、大学全体のガバナンス(組織統治)のあり方を見直すべきだと締めくくっている。

「本件の問題の本質は入学試験業務に対するガバナンス不全にあるものであり、入試委員長ら個人の問題とせず、本大学組織全体の問題としてとらえ、今後真摯(しんし)に施策を講じていく必要がある」

 ここまで見てきたように、差別を認定した第三者委の報告書には説得力がある。にもかかわらず、大学側は受け入れようとしていない。

「属性によって結果的に差があるのは事実です。評価する先生の心証で、男子や現役生が優遇されていたことがないとは言いません。どこまでが公平・公正かというのは非常に難しく、最終的には主観的な部分が占めます。私どもとしては、一律に評価したものではありませんとしか言いようがないのです」(大学の担当者)

 このように第三者委の結論を否定しながら、一方では、「意図的ではないにせよ、属性による評価の差異が生じ、一部受験者の入試結果に影響を及ぼした可能性があったとの認識に至りました」と説明。15~18年度の第2次試験受験者で、不合格になった人らに受験料(6万円)を返還するとした。

次のページ
追加合格などの救済措置はしない方針