韓国政府は、日本への依存度が高い素材、部品、装置部門の100品目について輸入先多角化と国産化のため、昨年約800億円、今年約1900億円の予算をつけた。これで勢いを得た韓国企業は、サムスンへの製品供給に食い込む絶好のチャンスと開発に死に物狂いだ。海外企業も日本企業に代わるために積極攻勢に出る。

 日本企業が絶対的優位にあるという日本側の思い込みは錯覚だったようだ。サムスン側の協力がなければ、その地位は揺らぎ、補助金を出されると意外と簡単に追いつかれる。そして、何よりの誤算は、サムスンの「巨大さ」だ。サムスンの時価総額には、日本最大のトヨタも遠く及ばない。その巨大な調達規模による求心力はすさまじい。日韓対立は、半ば参入を諦めていた内外の企業を本気にさせてしまった。

 遅ればせながらそれに気づいた経産省は、慌てて、規制強化後輸出実績のなかったフッ化水素の輸出許可を出し、森田化学工業がようやく出荷した。

 しかし、サムスンも韓国政府も、一度経験した「安倍リスク」を忘れることはない。しかも、時間が経てば経つほど、韓国側の対応が進み、日本は不利になる。今こそ、徴用工問題を含めて、日本側が歩み寄りの姿勢を示すべき時だ。それをしなければ、日本経済は、世界最強の日韓協業体制という大きな宝を失うことになるだろう。

週刊朝日  2020年1月31日号

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