この輪郭、この厚み。これぞリアル。これぞ主婦。昔は庭から必ずのぞき見してくる隣の奥さんといえば冨士眞奈美だったけど、松下さんには安心してそのポジションをまかせられる。
福々しい笑顔で主婦・幸恵は言う。「家庭は修行の場よ~。焼けた石の上を素足で歩くようなものよ」
姑(しゅうとめ)の介護にパート、娘のお受験に家事に夫の浮気。也映子と理人の恋が、少女漫画ど真ん中のキュンキュンファンタジーなら、幸恵は見ている主婦たちを高速で千回うなずかせるリアルのあびせ倒し。
またね、夫・弘章を演じる芸人・おぎやはぎの小木博明が絶妙なんだ。絶妙に腹立つ顔してるんだ。ふつうに小木なんだけど。
ふつうに小木が、「あんな完璧に(家のことを)やろうとしなくてもいいんじゃない? ちょっと見ててキツいよ」とか言うんだ。それを言っちゃおしまいよってセリフを、小木に言われると腹立ち倍増する仕組み。
まぁ、そんな忙しい主婦が優雅にバイオリン教室とか行けますかってのが、そもそもファンタジーなんだけど。今すぐ松下由樹になって、小木を殴り倒したい気持ちは超リアル。
※週刊朝日 2019年12月27日号