鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中
鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中
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映画「道草」の一場面 (c)映画「道草」上映委員会
映画「道草」の一場面 (c)映画「道草」上映委員会

 放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は障害者の日常を描いた映画「道草」について。

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 先日、兵庫県西宮市に映画のトークショーをしに行ってきました。Eテレで放送している、みんなのためのバリアフリー・バラエティー「バリバラ」に出演している玉木幸則さんに呼んで頂きました。映画は「道草」。全国自主上映が中心なのですが。

 東京の街角でヘルパーを利用しながらひとり暮らしを送る人たち。彼らは自閉症と重度の知的障害があり、自傷・他害という行動障害がある人もいる。映画は、自閉症と知的障害のある青年が町を歩くシーンから始まる。歩きながら道に咲く花を摘んで、いきなり口に入れようとして「もう、これで終わり」と止められる。この青年はヘルパーのアシストにより、自分で生活をしている。

 映画館では笑いもこぼれる。一番笑いが起きていたのが、歩いてるときに人とすれ違うと「ターー」と叫んでしまう青年。ヘルパーは「すれ違った人がビックリしちゃうからターって言っちゃダメ」と注意する。青年は「わかった」と言う。再び歩き出して人とすれ違うと「ターー」と叫ぶ。ヘルパーは「ちょっと! ターって言わないで。約束して」と言うと「約束する」と答える。そして歩き出すと、「ターー」と叫ぶ。この繰り返しが何度も続き、観客はかなり笑っていた。このシーンの途中にこのヘルパーのインタビューが入る。「恥ずかしいと思ってしまう自分がいる」とはっきり言っているのだ。介護者だって人なんだよなと。

 このシーン、あとで玉木さんに聞いてみると、青年は完全にコミュニケーションとしてやっているのだと言う。人によっては、「ター」を止めることができないのだと思うだろうが、これはコミュニケーションなのだと。

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