「大根はピーラーで少し長めに削っていただいて結構です。年齢と共についつい“やわらかくて食べやすいもの”を求めてしまうこともありますが、食材をきちんと噛んで、唾液の分泌を促すことも大切ですから」
唾液には抗菌作用や、食べ物の中のでんぷんを麦芽糖に分解し、消化を助ける消化作用など、さまざまな働きがある。
「よく噛んで食事をし、唾液を出すということは、そのあと体内の臓器にかかる負担を軽くすることにもつながっているのです。白菜の鍋も大根の鍋も、野菜がたっぷり摂れるように食べやすい切り方をご紹介しましたが、その分どうぞ、“意識的に咀嚼して食べる”ということを忘れずに」
手間をかけずに効率よく栄養を摂取し、健康を守る。そのためのテクニックとして、浜内流・ヘルシー鍋をフル活用していきたい。
さて、次はちょっと贅沢なひとり鍋を料理研究家の本田明子さんに教えてもらった。ひとりでも鍋を楽しみたいときはあるものだ。そしてひとりで楽しむのであれば、たまには少し贅沢をしてもいいではないかというこちらのコンセプトのもと、本田さんがまず紹介してくれたのは「芋煮鍋」だ。
芋煮鍋は、東北地方ではおなじみの料理。
「宮城風なら豚肉を使うとか、山形風なら牛肉を使うとか、芋煮鍋にもいろいろあるのですが、今回は牛肉を使った芋煮鍋をご紹介します。まず牛肉は、切り落とし肉を用意してください」
予算が許すのであれば、牛のしゃぶしゃぶ肉を用意してもよい。まず鍋に入れた調味料で肉を煮てから、肉は取り出しておく。そのあと鍋に、かつおでとっただし汁とごぼうを入れて煮る。このとき、汁の味は若干薄めに感じるくらいでかまわない。最後に、調味料で煮ておいた牛肉を鍋に戻すので、そこで味がちょうどよくなるからだ。そして、こんにゃく、里芋、葱を入れて15分ほど煮込む。このとき投入する葱は、白い部分を、斜め切りするのではなく約2センチくらいのブツ切りにするのがポイントだ。「コトコト煮込んで味をしみ込ませるためです。ブツ切りのほうが噛み応えがあり、葱の旨味を堪能できます」
煮込むときの注意点は、とにかく噴きこぼれないように気をつけること。噴きこぼれそうになったら、弱火に変える。その繰り返しで煮汁を具材にしみ込ませる。そして里芋がほろりとやわらかくなってきたら、きのこ類を投入。きのこ類は今回はしめじや舞茸を入れているが、自分の好きなものに代えてかまわない。
「しいたけを入れてもかまいませんし、クセがないものがよければエリンギを」
そして牛肉を鍋に戻し、今度は斜め切りした葱を入れる。
「このとき入れる葱は、上の硬い青い部分を使うときは、斜めに薄切りしたものを最後に入れるといいでしょう。中から葱の汁が出てきます。そこに七味唐辛子を振って召し上がってみてください」