うーん、なんてバランスのいい甘辛味。「七味唐辛子ではなく、粉山椒を振ってもおいしいです。この鍋は冷酒が合います。止まらなくなってしまうのが、困ったところなのですが(笑)」
この芋煮鍋、よりおいしくいただくには、牛肉は少し脂があるものを選ぶこと。そしてかつおのだし汁は、できれば“削り節”でとるのがおすすめだ。
「あと、ごぼうのささがきが苦手な方は、縦半分に切ってから斜め薄切りにしてもいいです」
本田さんが教えてくれたもうひとつの鍋は「ぶりとかぶの陳皮雪鍋」だ。
「陳皮というのは、本来は2年以上陰干ししたみかんの皮のことを言います。でもなかなかご自分で作っている方は少ないかと思いますので、みかんの皮を1日だけ干したものでかまいません」
そしてこの鍋は下ごしらえさえきちんとしておけば、あっというまにできあがる。
「昆布は前の日から、冷蔵庫でゆっくり戻しておいてもいいですね。ぶりは塩を振って、室温に30分くらい置いてから使います。豆腐や油揚げも切り、かぶはすりおろしておきます。そしてこの鍋はポン酢などではなく、味噌だれでいただきます。陳皮の入った味噌だれは、もちろん鍋を始める前に作っておきます」
この味噌だれがうまい。
「私は仙台味噌を使用してたれを作っていますが、味噌ももちろん、お好きなものを使っていただいて結構です。この味噌に陳皮もしくはみかんの皮のみじん切りと、砂糖、卵黄、長葱のみじん切りを入れて、よく混ぜ合わせてください」
みかんのほのかな香り。そして味噌と砂糖と卵黄のとけあった、まったりとした甘み。これはごはんのおともとしても活用できそう。
「ごはんのおともとして作りおきするときには、卵黄抜きで多めに作って、冷蔵庫保存しましょう。そして食べる直前に卵黄を混ぜることをおすすめします」
さあ、では鍋開始。昆布だし、酒を入れたら豆腐、油揚げ、ぶりを入れる。
「具材を一度にどっさり入れないように気をつけてください。具がドンと入りすぎると、急激に温度が下がり、鍋の中の汁がおいしくなくなってしまいます」
鍋のまわりがフツフツと沸き立ってきたら、かぶのすりおろしをのせ、陳皮もしくはみかんの皮の千切りを散らす。そして陳皮味噌だれでいただくという、なんとも贅沢な味わいの鍋。
「ぶりは、たらに代えてもおいしいです。冬のうまいものを堪能しましょう」
(ライフジャーナリスト・赤根千鶴子)