東急グループの東急不動産は、駅西口にできる同じく再開発ビルの「渋谷フクラス」(地上18階建て、高さ約103メートル)に、東急プラザ渋谷を12月5日にオープンする。こちらのコンセプトは「大人をたのしめる渋谷へ」。長い目で見て人生の終焉に備えるため、様々な身の回りの物や事の整理を考えるライフラウンジのフロアを設けたり、接待にも使える個室付きの高級レストランを入れたりで、スクランブルスクエア以上に「大人」を前面に打ち出している。
東急プラザ渋谷の長尾康宏総支配人は、
「世代的にはズバリ40代から60代を主力ターゲットにすえています」
この世代、特に子育てを終えた「大人女子」たちが元気で旺盛な消費活動を展開していることは昨年来、本誌が再三報じてきた。ついに、そこを狙う商業施設が現実に現れたのだ。
もう一つ、「渋谷PARCO」も再開発でビルを建て直し、11月22日に新生オープンした。「ノンエイジ・ジェンダーレス・コスモポリタン」をキャッチフレーズに、特定の年代や性別にターゲットを絞っていない。PARCOらしくファッション感度の高い人に集まってほしいようだ。
三つの新ビルで渋谷が活気づくことは間違いない。そして、駅周辺の二つの動きを見ていると、「大人」がキーワードの一つになりそうなのである。
そもそも、なぜ、渋谷は若者の街になったのか。
渋谷の魅力を様々な角度から分析した『渋谷の秘密』(三浦展監修、PARCO出版)によると、代々木練兵場が近くにあったため、戦前の渋谷は軍事色の強い街だった。戦後も駅前は闇市でにぎわったが、NHKができ、東急や西武の商業施設ができるにつれて、徐々にイメージが変わっていった。
若者が目立つようになったのは、前の渋谷PARCOが1973年にオープンし、おしゃれな人たちが集まり始めてから。元PARCO社員でマーケティング情報誌「アクロス」編集長だった三浦氏が言う。