「先輩に聞くと、70年代末の渋谷が一番トンガっていて、カッコいい若者ばかりが街を歩いていたそうです。僕が勤め始めたころは、もう大衆化が始まっていました。80年代になるとJJのモデルと同じ格好をした女子大生があふれ、90年代には今でいう『量産系』が増えましたね」
90年以降はさらに大衆化・低年齢化が進んだ。「ガングロ」が流行り、商業施設「109」が若者の拠点となって、「渋谷=若者」のイメージが強まっていった。
近年は、年1回のハロウィーンと、スポーツイベントの節目などにスクランブル交差点に集まる若者たちが話題になる。暴徒化して逮捕者が出たこともあったが、昨年末の年越しカウントダウンはNHKの「ゆく年くる年」で中継された。
「(渋谷が中継されるのは)近年では初めてです。日頃から若者を中心に多くの人が集まる渋谷で、平成最後の年越しの瞬間をお伝えしたいと考えました」(NHK広報部)
確かに渋谷を歩くと、スクランブル交差点や「109」、センター街などは若者だらけだ。記者は渋谷に乗り入れる電車を30年以上通勤に使っているため、よく渋谷で降りる。カフェで読書をしていると、店の客がほぼ20代で自分が「浮いている」のに気づいたことが何度もある。渋谷をよく利用する40代の知人は、こんなことまで口にする。
「来ても宮益坂周辺に行くだけです。若者が多いスクランブル交差点側には近づきません」
そんな声もある中で、駅前の二つの再開発ビルが「大人」重視を打ち出したのである。
東急グループが「渋谷=若者」とされるイメージを変えたがっていることはほぼ間違いない。複数の幹部が、冒頭のスクランブルスクエアの高秀社長と同じ発言をしていた。(本誌・首藤由之)
>>【後編】「母娘」ならぬ「父息子消費」 渋谷「大人化」計画で街が変わる!?へ続く
※週刊朝日 2019年12月6日号より抜粋