パワハラ騒動は昨年1月、伊調選手を指導する警視庁の田南部力コーチの訴えなどを元に弁護士が内閣府に告発した。しかし協会の第三者委員会は「栄氏が警視庁道場への出入りを妨害した」などの根幹部分をほぼ否定し、栄氏が伊調選手に「よく俺の前でレスリングができるな」と言ったなど一部だけ認定した。
昨年4月に強化本部長を辞した栄氏は6月の選抜選手権の試合中に芸能人と食事していたなどで監督を解かれ、8月に同大学職員も辞した。その後、同大学は集団指導体制を取り、栄氏は昨年12月から外部コーチとして招かれていた。
ある協会関係者は「栄氏の後、中心的に指導していた大学職員の志土地翔大コーチ(32)が向田真優主将(22)と婚約し、公平性への疑念払しょくのためにコーチを辞任したこともあって、この時期の復帰になったのでは」と見る。
日本の女子レスリングを引っ張ってきた栄氏は東京五輪で活躍できるのか。
日本レスリング協会の福田富昭会長は「大学での監督復帰が決まれば能力の高い栄さんには往年の力を存分に発揮してほしい。東京五輪で日本代表のコーチにできるかどうかは白紙ですが、まずは持ち場で頑張ってもらい協会のコーチ委員会で検討してゆきたい」と話した。(粟野仁雄)
※週刊朝日 2019年12月6日号