来シーズンに向けて動き始めたプロ野球。西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏が、変化する新人育成について語る。
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ロッテからドラフト1位指名を受けた大船渡高の佐々木朗希投手への指名あいさつが10月29日にあった。井口監督から「日本一の投手になるために、体作りからしっかりやっていこう」と言葉をかけられたそうだが、高校時代から163キロを投げられるスケールの大きな投手を育てることは、球団としても、大きな責任とプレッシャーを感じていることだろう。
私も西武監督時代の1998年ドラフトで、横浜高の松坂大輔の交渉権を獲得し、オフの間は「どう育てていくか」と考えたものである。当時は球団としてのノウハウというよりも、監督に育成法を一任されていた部分がある。今は、医療スタッフ、現場監督、球団のビジョンが確立されているから「全員で育てよう」となるはず。二十数年前とは環境は全然違うよね。
私の時はある意味、楽であった。なぜなら、大輔はプロの先発ローテーションで回るだけの体力と馬力があったからだ。高卒投手を1年目から1軍で起用する上で大事なのは、プロで1年間戦い抜くだけの馬力を持っているかどうか。そこが欠けてしまうと、良いパフォーマンスの持続はできないし、疲労がたまった状態で投げ続ければ、故障や変な癖がついてしまう。
体力がなければ、先発投手なら、登板間の時間を「試合のための調整」に費やしてしまう。若い頃はどんどんパワーアップし、体を大きくする必要がある。「調整」優先ではいけない。先発なら中6日の間に強化メニューをどれだけ入れられるかが、スケールアップには不可欠である。体を作るための体力。そこをまず見抜かなければいけない。
一方で、いつまでも体作りだけでは、本人の技術的な成長は得られない。試合と体作りのバランスをどうとっていくか。骨太な選手を作るには、1軍デビュー時期をどうするかよりも、大切なことである。