初球から内外角のコースギリギリに構えている。球威がある戸郷は、ど真ん中に投げてボールが散ってくれればいい投手である。コーナーに構えれば、投手は窮屈になる。制球力で勝負する投手とは別である。
この回、1死から内川にカットボールを安打されると、今度は武器であるこの球種の割合も減った。そして1点を勝ち越され、なおも2死満塁の場面。3番・柳田に対し、2球ボールとなって捕手の大城が構えたのは、またも内角の厳しいところだった。柳田はホームベースギリギリに立っている。そこで内角に要求するのは酷だ。案の定、3ボールとなってストレートの押し出し四球。重い2点目を献上して、続くデスパイネの2点打を浴びた。
追い詰められれば、心理状態はさらに悪くなる。その差が最後は大きな差となってしまった。坂本勇人や丸佳浩という日本を代表する選手でさえ、短期決戦では封じ込められることはある。だが、他の選手が、俺がカバーしようとか邪念が入ると全員が負のスパイラルにはまる。大事なことは、自分の特長を出し切ることに集中すること。その積み重ねが勝利へつながる。
近年ずっと大舞台に進んでいるソフトバンクと5年ぶりのリーグ制覇を果たした巨人。その経験値の差も出たシリーズだったかな。
※週刊朝日 2019年11月8日号