後からの値上げが難しくなるのなら、早く始めたほうがいい。修繕積立金の改定に参考になりそうなのが、管理組合の運営で「理想的」だとマンション関係者から評価が高い「白金タワー」のケースだ。

 東京都港区の地下鉄白金高輪駅に直結する42階建て581戸、店舗22区画のタワマン。10年の管理会社の現金使い込み事件をきっかけに、企業経営者らの区分所有者が管理組合の経営改革に取り組んだことで知られる。厳格な審査による管理会社の変更や外部監事の導入、管理組合の法人化など次々に改革を進めたが、修繕積立金も例外ではなかった。

 管理組合法人の星野芳昭代表理事兼理事長が言う。

「竣工から10年間は販売会社の販売方針から必要な計画修繕費の半分しか積み立てられていませんでした。このままではいずれ多額の一時金を集めなければならない、そんな先送りはしたくないと、15年度に適正化に取り組んだのです」

 35年度までの20年間に必要な計画修繕費を積み上げて、それを今後の一時金や値上げなしに賄うにはどうすればいいかを考えた。その結果、それまでの専有面積1平方メートル当たり月額160円を2倍以上の360円にする案がまとまった。

「ほとんどの区分所有者に賛成して頂きました。都心有数のビンテージマンションになるという将来ビジョンを示して、安心して長期間住み続ける、持ち続けるには修繕積立金を適正化するしかないという考え方が支持されたのです。修繕積立金の水準の高さはそのまま資産価値の高さにつながると考えています」

「マンションは管理を買え」とよくいわれるが、巨額費用がかかるタワマンはなおさらのようだ。もしあなたがタワマン関係者なら、自分のところの「長期修繕計画」を早急に点検すべきだろう。タワマン購入を検討しているなら、修繕積立金が購入後にどうなっていくのかを見極めたうえで決断してほしい。(本誌・首藤由之)

週刊朝日  2019年10月25日号

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