ところが出費の欄を見ると驚く。15年目に「約12億円」、30年目に「約18億円」と巨額の出費が予定されているのだ。これこそ大規模修繕の費用にほかならない。14年目までに修繕積立金は約11億円積み上がる予定だが、15年目の1回目の工事でいったん蓄えを使い果たし、その後は毎年使うお金もあるので29年目までに積み上がるのはわずか約5億円の予定だ。このままでは2回目の工事費用に約14億円もお金が足りなくなる。
住民が首をひねる。
「15年目の1回目の大規模修繕は何とかなるような気がしますが、30年目の2回目は今のままでは完全にアウトですね。一体、どうなっていくことやら……」
住宅ジャーナリストの榊淳司氏が言う。
「タワマンが大量建設されるようになったのは2000年代初頭からです。その大量に建てられたタワマンが、一斉に大規模修繕工事の時期を迎えつつあります。タワマンの工事は一般のマンションより難易度が高いとみられ、滞りなく進むのか疑問視する見方があります。業界ではタワマンの工事がピークを迎えそうな年になぞらえて、『2022年問題』と呼ばれています」
タワマン建設の勢いは一向に止まらない。
不動産調査会社「東京カンテイ」の昨年の発表によると、全国の20階以上のタワマンは今や1371棟・約35万9千戸。うち首都圏が棟数で5割強、戸数で6割強を占める。不動産経済研究所によると、19年以降も全国で300棟・約11万4千戸が供給される予定だ。既存のタワマン同様、やはり首都圏が7割強を占める。
そんな大量供給が続くタワマンの大規模修繕に疑問の声があるというのである。難易度が上がるとされるのは「工法」と「費用」の二つの側面だ。
■屋上からつるしゴンドラで作業
まず工法面。外壁で作業をするには足場がいる。ネットで覆われ、その中に足場が組まれている建物をよく街で見かけることがあるだろう。普通のマンションなら、そうした足場を積み上げていけばいいが、タワマンほどの高さになると一定階から上は組めなくなる。上層階で外壁工事をするには屋上からゴンドラをつるして、その中に作業員が入って補修するしかないため、関係者からは次のように心配する声が上がった。