手ごわそうな題名と厚さだが、465ページをするすると読み終えてしまった。『哲学と宗教全史』(出口治明著、ダイヤモンド社、2400円※税別)を読むと、人間は世界をどうとらえてきたのか、宗教はどのように始まったのか、紀元前から現代までの哲学と宗教の流れがよくわかる。
「死んだらお寺の世話になるとか陰陽五行説に由来する丙午とか、哲学と宗教は今でも日常生活に影響を与えているんですよ」
出口治明さんは日本生命を経てライフネット生命を起業し、上場。昨年から立命館アジア太平洋大学(APU)の学長を務めている。無類の読書好きで、今までに読んだ本はおよそ1万冊。とくに歴史に造詣が深い。本書では3千年に及ぶ歴史を体系的に語っているが、改めて準備したことはなく、頭の中の知識を整理しただけだったという。
哲学と宗教は世界を丸ごと理解しようとする試みだと出口さんは語る。技術が細分化し、個人が独立して全体像が見えにくくなった今の時代だからこそ、
「我々の先祖が世界をどう理解しようとしたのかが今後を考えるヒントになる。僕は専門家ではないけれど、71年生きてきたし、本もたくさん読んできたので書いてみようと思いました」
肖像入りの相関図が付いているので、名前しか知らなかった哲学者が身近になり、孔子とブッダは同時代人といった発見もある。わかりやすさの追求は京都大学で教えを受けた高坂正堯さんの影響が大きい。冒頭5ページで理解不能な本は読む価値なしという言葉が今も焼き付いている。
本好きは子どものころからだった。育ったのは三重県の伊賀上野。山深い4軒ほどの集落だった。虫を捕り、魚を釣り、雨が降ると本を読んだ。
中学時代は歴史の本に夢中になった。体格がよく喧嘩が強かったことから、アレクサンドロス大王に憧れた。喧嘩では5発殴って勝っても、3発は殴られる。なのにアレクサンドロス大王は10年間、戦争に勝ち続けた。それはなぜか?